乳児が二足で立っている。

そして、ぞっとした。

ソレの爪先が、私の方を向いていたからだ。


見てる。


アレは私を見てる。


こっちを、見てる。


「○○さん大丈夫!?」


自分を奮い立たせるようにしてそう言い、電気をつけた。

明るくなった部屋にあの不気味なものは消えていた。


私は何事もなかったように振る舞った。

興奮する患者さんはひとしきり喋ったが私は何も見なかった振りを徹底した




患者さんのためではなかった。



多分この部屋のどこかの暗い隅あたりにいるアレに、私が見たこと知られたくなかったのだ。

アレがなにかは未だに知らない。

でももう消灯時間になっても、




あの部屋の電気は




消さない。