友人Mの話である。


ある時Mはネットオークションでワンピースを落札した。

少し退廃的な感じのクールなスタイルに一目惚れしたのだという。

とくに競り争う事もなくMはワンピースを手に入れた。

しばらくしてワンピースが届いた。

イメージ通りの姿に惚れ惚れしながらハンガーにかけて部屋に吊し、上機嫌のまま眠る。

その夜の事だ。

ガタッという音で目が覚めた。


なんや?


周りを見回すが特に変わった様子はない。

しかし一度起きてしまうとなかなか再び寝付けず、何度か寝返りをうつうちに誰かに見られている気がしはじめた。

気のせいだと思いつつもうっすら目をあけると落札したワンピースが見える。


…気持ち悪い。


薄暗闇で見ると、まるで人が立っているように見える。


いや。

立っているというより首つりをしているように見えた。

明日になったらしまおう。

そう思って何気なくワンピースの首もとを見た。


……え?


目を疑った。

首もとにあるはずのハンガーが見えない。

驚いてワンピースの真下の床を見た。

ハンガーが落ちている。

ガタッという音はこれだったのかと妙な納得をした。


……え?

あれ、どうやってかかっとん?


その時ワンピースが


がっくん

がっくん

がっくん

がっくん


と、大きく揺れた。


怖くなった。


何も見なかった事にして、震えながら寝たふりをする。

少しだけ寝たらしく気づくと朝だった。

ワンピースはハンガーとともに床に落ちていた。


夢だったのかもしれない。


ただそれで済ませるには昨日の体験が恐ろしすぎる。

安心が欲しくて、取引をした相手にメールを送った。


『ワンピース届きました。迅速な対応ありがとうございます。ただちょっと聞きたい事があるんですがいいですか?』


相手からの返事は、無かった。


Mはそのワンピースを一度も着ないまま

ネットオークションで売ったという。