ジュースを買って、俺と高野は先に映画館に入る。

席に座り、映画が始まるのを待つ。

「へー映画館って、広いんだねー」

「…来たことねぇの?」

「んーのんちゃんとは来たことあるけど、あたしはのんちゃんに振り回されっぱなしだったし。
映画ものんちゃんが選んだから、話もあんまり覚えてないの。もっと狭いところで上映してたし」

「子供のときは?」

「お母さん厳しかったし…実もまだ保育園生だったから、あたしの我が侭は聞いてもらえなかったんだ」

「ふぅん」

「京哉くんは、よく来るの?」

「俺は…あんま、かな。見たいのがあれば、圭とか…」

「?」

「…誘うけど」

俺がそう言うと、高野は苦笑いした。


「いいよ、彼女って言って」

「…昔のことだから」


圭とか…まぁ、彼女とか。

その彼女は、俺に告白してきた奴。

まぁ…ざっと五人ぐらい。

長く続いて…最高で、1ヶ月ぐらい。


…その程度の存在だったんだ。