「何も食べないのか」


からかうような声に顔を上げらない。

私の前に馳走がないもを知ってのこの言葉に周囲は笑っていた。

…ここも
同じ。

私を愛する場所などどこにもなかった。


西の国についた途端桂乃皇子は私を部屋に呼んだ。

高鳴る胸のままそこに行き、微笑むとこう言われた。


『何をしている。頭を下げろ』


その声の冷たさに心臓が冷えた。

作法の違いかと思い頭を下げると喉の奥で嗤われる。


『夫婦になる故、辞儀は不要と思ったか』


震えがくるほど冷徹な言いように歯が鳴りそうになったが、怯えていてはいけないと思った。

夫婦になるのだ。

きちんと意見を言い話しあえる関係でなくてはならない。


意を決し口を開いた。


『そのような事は』

『自惚れるなよ』


私の言葉を遮り桂乃皇子は言った。


『東の国との国交は短期間のみ。積年の確執がこんなもので解決されるとは思っていまい。向こうだとてそんな甘い考えはなかろうよ』

それはわかっていた。

東と西はいつかまた互いを潰さんが為戦いを始めるだろう。

でもなぜ今それを私に言うのかはわからなかった。

思わず顔を上げると凍りつくような瞳が私を見下ろしていた。


『お前を選んだのはかの『陽の姫』より国に通じていなさそうだからだ。それ以外の意味はない』