~~side朧~~



儚くも美しい響きに
心が酔う。


『朧』。


誰にも
呼ばれなかった。

誰も私を
呼ばなかった。

だから必要なかった。

名など。

求めたこともなかった。

望んだこともなかった。

名など。


私という
『個人』など。


でも

今からは
呼ばれる。

呼ばれる。

呼ぶ。

彼が
呼ぶ。


『朧』と。


なんの付属でもなく
なんの対でもない

私の名。


『朧』。


…私の名は

『朧』。