…想像もつかない。

春は
どう過ごしたのだ。

夏は
どう過ごしたのだ。

秋は
どう過ごしたのだ。

冬は
どう過ごしたのだ。

朝は
昼は
夜は

どう過ごして
生きて来たのだ。

この
姫は。


その過去を思い、刺さるような悲しみと煮えるような怒りを覚えた。

心無い占によりこの女を孤独へ追いやったすべてに憎悪した。

そして疎まれ遠ざけられ続けたにも関わらず歪まなかった姫の美しさに唇を噛んだ。

慣れていないと、そう言った姫に、痛んだ。


『…慣れていないのです。誰かが傍にいることに』


何度も何度も脳裏で反芻されるその台詞に、心の臓が斬りつけられる。

…痛む。

…ひどく。

呼吸がしにくい。

淋しさも、切なさも、すべて通り過ぎてしまったような顔はひどく俺の胸を騒がせた。


…近づくな。


頭の奥のどこかで、警鐘が鳴っている。


…これ以上、この女に近づくな。

…戻れなくなる。

…歩けなくなる。

だから
近づくな。


……だが。

痛むのだ。

痛くて痛くて
…しかたない。


姫のこんな表情が孤独からくるものならば、それから連れ去れば俺の心は安らぐのか。

姫のあんな言動が孤独からくるものならば、それから引き抜けば俺の心は安らぐのか。

姫が孤独であるから俺が落ち着かないのであれば、

それなら、

それなら
いっそ、



「…ならば」



ほとんど無意識に、囁くように、声が、出た。



「慣れてください」



顔を上げた姫と視線が合った。