17年間かけて少しずつ少しずつ死んできた心は、婚儀の時に息絶えた筈だった。

無くなった筈だった。

なのに、震える。

……震える。


(…怖い)


そう思った。

腹の底の奥深い場所から、そう思った。


…怖い。

怖い。

この人が怖い。


私の横に腰掛け
何も言わず

ただ

傍にいるこの人が


私は怖い。


彼の行動が
彼の言動が
彼の心遣いが

温かくて
怖い。

その熱は甘美で
魅力的すぎて

私には恐ろしい。


『慣れてください』


怖い。


『私が傍にいます』


怖い。

この人が

怖い。

ただ
傍にいる

いてくれるこの人が


私は怖かった。


そして

そして
自分が


怖い。