姫はふと笑顔を消した。

まるで自分が笑うことこそ罪でけがらわしいことと思ったようだった。

それに痛む。


「もう、言いません。二度と何も…言いません」


その言葉に、俺は自分の失態を知った。

姫は、戦い方を知りたいと、死に方を知りたいと、そう言った。

それは、なにも望まなかった女の唯一の譲歩であるかもしれなかった。

それを俺が破壊した。

くだらない自尊心で。


笑顔も捨て、望みも捨て、姫は閉ざされる。

闇に。


「戯言…お忘れください」


もう一度深く頭をさげ、姫は部屋を出て行った。

俺は動けないまましばらくそこにいた。


目を…閉じる。


そして…開く。


おかしいほどに脳裏は姫のことで占められていた。

恋を、した。

引き返せぬ…恋を。

障子をあけ外に出る。

雪が降っていた。

白く淡く美しいそれをみながら、思った。




目前を舞うは花。

心の花。


かの人を想いし
我が恋の

花。