私は何の為に
生まれたのだろう。

祝言の盃に注がれた酒をぼんやりと見つめながらそう思った。

隣には秀麗な顔で優雅に微笑む男。

桂乃皇子と呼ばれる
西の国の統治者。

一寸たりとも私を見ないこの男に、

今日、私は、嫁ぐ。


狭い部屋の中、ほんの数名だけが婚儀を祝いにきている。

四方の蝋燭。

それ以外に灯りはない。


私と、桂乃皇子と、数名の来客。

小さな蝋燭の火に揺られるその影は形さえ掴めず

消える寸前の蜃気楼のように障子を舐めるだけ。

これが、
私の世界。

私の世界に光は許されない。

そう言われている
気がした。


用意された馳走は豪華なものだが、私の前には無い。


備えられた座布団は美しいものだが、私には無い。


板間の冷たさが、足を刺していた。


欠片も私を歓迎していないこの国に、今日、私は、嫁ぐ。