なんの苦労もせず生きて来たであろう女に『忍』と同じような後先のない覚悟が備わっているのかが俺にはどうしてもわからなかった。


姫はこう言った。

『戦い方を教えてほしい』と。

そしてこう言った。


『死に方を知らねばならない』と。


生きる為の戦い方、それが普通の人間の定義だ。

だが忍は違う。

どう死ぬかの為の戦い方。


極限の忍の本質。

この女は自分でそこに辿りついた。


…なぜ。


そこに少し興味を持った。


「死に方を、教えてくださいませんか」


その瞳にはやはり熱がなかった。

悲しみも絶望もそこにはなかった。

ただ、嘘偽りなく女がそう言っていることはわかった。

それに興味がわいた。

忍は様々なものを捨てる。

任務の為に死ぬこと
それを遂行する『モノ』となる為忍びは色々なものを捨てる。

ならばお前も捨ててみせろ。

そう思った。

女がどこまで自分を捨てられるか。どこまで『姫』を捨てられるか。

それは残虐な好奇心だった。

『人』というものを闊歩し俺達『人に非ぬ』ものたちを虐げて来た者に対する腹いせでもあった。

傷つけてやろうと思った。

組み伏せてやろうと思った。


この綺麗な人間を
ずたずたに。