~~side霧夜~~



簪を、与えたかった。

いつも身につけられるそれを与えたかった。

俺が選んだものを身につける。

俺が買い与えたものを身につける。

それは、姫が俺のものであるという証のような気がしたから。

たとえそれが真実でなくとも、俺はそれに酔ってみたかった。

だから、簪が、与えたかった。

いつも身につけられるそれが。

でもそれは許されなかった。

叶えられなかった。


なぜなら姫は

俺など

要らないからだ。