「友達の恋を守ろうとしたのはわかります。そのためにキツイ口調が必要だったのもわかります。けど」


こんなに惨めで悲しいのに涙が浮かんでこない私は、

本当に可愛くない。


「なんで私を傷つける必要があったんですか?」


彼は衝撃を受けたように息を飲んだ。


「…残念です」


心から、そう言う。


「初めて会った貴方にこんな嫌な感情しか持てなかったこと、残念です」


レシートを握る手が白く冷えるほど私は傷ついていた。


「それすらも」


私はレジに向かう。


「貴方にはどうでもいい事なんでしょうけど」


そう

言い残して。





勿論見合いは失敗に終わった。


どうして失敗になったのか私は母に言わなかった。


ただ、価値観が合わなかったといって済ませた。


大事にしたら、今度こそ本当に見合い相手の恋と人生を破壊してしまう気がしたからだ。


それに出来ればもう思い出したくなかった。


そして、






思い出されたくもなかった。