「マリのこと好きなくせに、なんで見合いなんかしてんだお前!」

「…色々、事情があるんだよ」

「なんだよ事情って!マリ、泣いてたぞ!」

「……!」


どうやらマリさんとやらの涙は見合い相手の心にクリティカルなダメージを食らわせたらしい。

私は黙ってまた紅茶を飲む。


「自分がいつまでもフリーターだから、嫌気がさして、公務員の女と結婚するつもりなんだって泣いてたぞ!」

「誤解だ!」

「うるせえ!俺に言うな馬鹿!」


確かに。

それが誤解だというのならマリさんとやらに直接言うべきだと私も思う。


「上司からの頼みなんだよ!仕方ないだろ!断れないだろ!」


……おいおい。

いくらそうだったとしても、
頭に血がのぼってたとしても、

私を前に『仕方ない』とか言っちゃ駄目でしょう。

さっきまでニコニコしてたのは何だったんですか。

ややザックリと傷つきながら、それでも平静を保つ。

紅茶がさっきより苦い。


「知るかよ」


そこで乱入者は、私に視線を寄越してきた。