私立 凛兎(りんと)学園。
良家の子女が数多く通う事で有名な、正真正銘のお嬢様学校だ。
毎日毎日校門の前にはリムジンやロールスロイス等、高級外車がズラーーッと並んでる。
私もピカピカに磨きあげられたリムジンに乗って、そんな凛兎学園に向かっていた。
「お嬢様、今日はお迎えは5時でよろしいでしょうか?」
私が生まれる前から働いてくれている運転手・谷内が運転席から尋ねて来た。
「うん。よろしくね谷内♪」
「かしこまりました」
「ねっ、今日の髪型変じゃない?」
今度は私が谷内に頭を向けて尋ねる。
「大丈夫ですよお嬢様。とてもお似合いです」
にこやかに笑う谷内の言葉に安堵して、カバンの中から小説を取り出す。
しおりを挟んでいたページを探しあて、続きを読み出した。
まだ着くまで後10分はあるから、ちょっとは先に進めるよね?
犯人が誰なのか気になるけど、そこまでは読めないだろうな。
「あ、コイツのアリバイ完璧だって証明されちゃった……」
――――…私は一条 美名《いちじょう みな》、現在中学3年生。
一条グループの社長令嬢で、小さい時から何不自由無く生きて来た。
…………“一部”を除いてはね。
推理小説を数ページ読み進めていると、車が止まった。
谷内はいつもスマートに停車してくれる、優秀な運転手だ。
運転終わりに私が出るドアを開けてくれる早さも、運転手の中ではピカイチ!
「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
恭しく頭を下げる谷内にお礼を言って、私は校舎に繋がるなっがーーい道を歩いた。
一条グループ令嬢としてバカデカイ屋敷に15年住んでるけど……校門から校舎までこんなに遠くする必要、無いでしょう!!
「あーーー…意味が分からないわ……」
空を見上げながら呟いた。
いい天気だなぁ…………
「あ、美名おはよう」
後ろから挨拶され、空を見ていた目を声の主に向ける。
長い髪をキレイに結い上げた身長160位の女の子が、笑顔で立っていた。
「あっ、李子!おはよう!!」
彼女は伊集院 李子《いじゅういん りこ》といい、ホテル経営で名高い伊集院グループの令嬢。
“一条”と“伊集院”で名字が近く、1年生の時席が前後だったのがきっかけで仲良くなった。
ホテル経営のマナー等を叩き込まれているので、凛兎の生徒の中でもマナーに厳しい子なのだ。
「何が意味分からないのよ?」
「へ?聞こえてたの!?」
「聞こえてましたとも。アンタ一人言ってさみしいわねぇ」
苦笑いの李子の後にくっついて、私も校舎の中に入る。
体育館並みに高い天井。
あちこちに飾られている高そうな壷や絵画。
顔が反射して見える程光ってる床。
誰がどう見ても金持ち学校と分かる校舎内を、2人して歩いていた。
「李子、なんでここ、こんなに広いんだろうねぇ」
「………アンタ入学して3年目だよ?何言ってんのよ今更」
李子の苦笑い度がレベルアップした。
苦笑いでも美人って、いいねぇ李子ちゃん。
私もその位美人が良かったわ!!
教室に着き、机にカバンを置く。
「別に。アンタは初等部から凛兎に通ってるから、慣れてんだろうさ」
隣の席に座った李子に投げやり気味に言った。
「美名だって中等部からとは言え、もう慣れてよ!3年生なんだから!!一条家だってあんなに広いんだし!」
そう言う李子の家だって、メッチャ広い。
多分うちとそんなに変わらない広さで、初めて行った時軽く迷ったし……
「うん……まあね」
頬杖をつき、遠い目をした。
凛兎学園は初等部から大学まであり、大体の生徒は初等部から通ってる。
でも私は、中等部から入った。