「美鈴っ!校門まで勝負だ!!」
『へ?』
「負けたら鞄持ち~。よーいどんっ!!」
『ちょっとっ…!!』


秀は勝手に勝負を仕掛けてきて、スタートさせていた。

あたしは仕方なく、その勝負を引き受けるものの、いつの間にか本気になってて…


『ちょっ…待ってよっ!』
「待たな~い」


秀のおかげで、春樹のことが頭から離れていた。



「俺の勝ち~!」
『ってかっ…今の勝負の仕方っ…ズルいよっ…。
 スタートダッシュから出遅れたもんっ』
「まぁ、怒らない怒らない」


息が切れているあたしとは逆に、さわやかな笑顔の秀。


そんな秀の笑顔に、癒されている自分がいるのは確かだった。


春樹のことなんて…知らないんだから…。