ひやりとした冷たさが身を襲う。
瞼にしか当ててないのに、身体中が冷えていった。

いや、心が冷えたのか。
…落ち着いてきた。

自由にあってもきっと大丈夫。
笑顔でいられるさ。


「克木?」


自分の名を呼ぶ声がして、振り返ったら自由が、いた

なんで?
どうして自由が?

うろたえていると自由の後ろから部屋に戻ったはずの克木が立っていた。

克木は俺の心情が読めたのか、「外にいたから」とだけいった。

外にいたから中にいれたと?
つまり、自由は外で待っていた。
そういうことだよな?

「自由…、あー、その。昨日はごめんな」

朝の挨拶より先に、謝罪の言葉がはっせられていた。

たぶん自由は昨日のことを気にしているから。

まず先に、謝らなきゃ。
そう思った。

自由はふっと微笑んで首をふった。

「全然。むしろありがとうね。克木が彼処まできてくれなかったら私、勇気でなかったよ」

少し涙目で、輝いた瞳が綺麗で。
俺はじっと自由の目にみいっていた。

それに気付いたのか気付いていないのか。
自由は「ん?」といって小さく首をかしげた。

小動物みたいな可愛らしいしぐさ。

この子が、親友の自由が。
他の男の彼女になってしまっただなんて未だに実感がわかない。

ずっと、あいつよりずっと前から。

俺は自由を知って。
恋してたのに。



それから二人で少しはなした。

自由に昨日のことを何度か聞いてみるとはにかんだ笑顔。
それから必ず、こういった。

「内緒」

それに俺はがっかりしたような、安心したような複雑な思いにかられた。

知りたい。

でも、知りたくない。

自由と貴志の間に、何があったかなんて。
知りたくても、知りたくなった。