アランとジェフは先ほどの動物に導かれ、うっそうとした木ばかり茂る森の中を歩いていた。

すっかり日が沈み、空には昨夜の満月からは少し欠けた2つの月が昇っている。

2つの月の光のおかげで、深い森の中でも足もとは少々明るく先を進んでいく動物の姿も見失うことはない。


部下たちと別れてどれほどの時間歩いただろうか、開けた明るく広い場所に出た。

漸く目指す場所にたどり着いたのか、前を歩く動物が振り返り、

つぶらな赤い瞳でアランとジェフを見つめた。




ここはシャクジの森の中でもひと際美しいと言われているところだ。

背丈ほどもある花が咲き並び、夜露に濡れた花弁は月の光に照らされキラキラと輝いている。

脇には透明な水を湛えた泉があり、

泉の底からは絶え間なくこんこんと水が湧きでている。

その豊かな水のおかげか、ここの花たちは永遠に枯れることなく美しく咲いている。



アランたちを導いてきたつぶらな赤い瞳はといえば

少し離れた場所の一点をじっと見つめている。



アランたちがその視線を辿ると・・・・・その先に   


咲き誇る花たちに隠れるように


周りにいる数匹の愛らしい小動物たちに守られるように


その者はひっそりと力なく横たわっていた。




透けるように白く美しい肌は

2つの月の光を浴びて妖しく光っているように見える。




――人間か?・・・・それとも妖の類か・・・・?




妖しく光るその者の身体は夜の女神に魅入られ

そのまま月の光に溶けてしまいそうだ。



「ア・・・アラン様・・・。あの者は一体・・・・?」



呆然とし、息を飲んだまま動けないでいるジェフを残し

アランはその者の傍へとゆっくりと歩みを進めた。