「今までに、何度、君にこうしたであろうな。とても数えきれぬ・・・。私がこのようになるのは君だけだと、父君をはじめとした城の者は皆知っておる。どうにも変らぬ事実に正室は君以外はならぬと、個人的にではあるが私に命も出ておる」


・・・国王様からそんな命令が・・・ほんとうに?



「君は、覚えておらぬか?初めてキスしたあの日に私が申したこと。あれから、何一つ変化はない」



“こちらの扉は使わぬ”


覚えてるわ。

アラン様のお部屋には扉が二つあった。

一つはわたしのお部屋に、もう一つは側室用のお部屋に繋がってて。

あのときに銀の鍵を預けられたんだっけ―――



「・・・はい、覚えてます」

「ついでに申せば、あちらの扉の中は半ば物置になっておる。侍女長が、使わぬならば日々に増え続ける君への贈り物を入れて良いかと申して来たゆえ、あちらの鍵は今は侍女長が持っておる。・・・・そういえば、昨日見かけた折には首に提げておったな。問えば“失くしては困るからです!”と申した」



合い鍵の存在を忘れておるらしい、と言ってアラン様が微笑む。

侍女長さんがそんな風に鍵を持ってるなんて、想像するとなんだか可笑しいわ。



「そんなに、わたしに贈り物が届いているのですか?」



そんなこと誰も教えてくれないから、ちっとも知らなかった。

わたしの知らないことって、まだまだたくさんありそう・・・。



「山ほどに届いておる。だが、検閲前ゆえ君には見せられぬだけだ・・・。明日にでも、時間を作り部屋の中を見るか?中身は見せられぬが・・・」

「いいわ。いつかは、中身を見せてもらえるのでしょう?これからの楽しみにしておくわ。・・・それよりも、アラン様?ひとつ、聞いてもいいですか?」


「何だ?」


「わたしと出会ってから、アラン様は、何か、変わりましたか?」


私の変わったところ、か?と言って口元に手を当てて暫く考え込むアラン様。

わたしが考えて辿りついた、侍女長さんのしみじみため息の理由が違うみたいだもの。

メイのいう通りにしっかり見ていたつもりだけれど、アラン様はいつもと同じなんだもの、違うところなんてまったくわからないわ。



「そうだな・・いろいろに思いつくが、君に分かりやすく目に見えて変わったことは、一つだけあるぞ。それは―――・・・」