「フレール、カルモク、か。ともに、個人的に必要なものを注文してある。大した物ではないが、のちに君のところに届くよう手配してあるゆえ楽しみにしてるが良い。――――それよりも、だ。もう少し、此方に参れ・・・して、私の目を見よ」



何が届くのか、考える間も聞く間もなくアラン様の手によって少しだけ持ち上げられた身体が、ぽすん、と下ろされた。

少しだけ離れていた二人の間が一気になくなる。

身体も動かされたそのままにアラン様の方を向いてて、大きな揺れでも動かないようがっちりと固定された。

なんだかとても真剣な瞳にどきっとして怯むけれど、なんとか言われた通りに見つめる。

また、大事なお話が始まるみたい。




「君の疑問は粗方解決した筈だ。ゆえに、今度は私の番だ。良いな?決して、逃がしはせぬぞ」


「は・・・はい」



言葉と態度から並々ならない決意を感じてしまう。

内緒にルーナさんとお話した、あんなことやこんなことが思い出される。

けれど、やましいことは何もしてないはず・・・何を、聞かれるのかしら。


真っ直ぐに向けられる深いブルーの瞳からつい逃げたくなる。

それをなんとか堪えて見つめ返した。



「・・・先程君は、馬車を見て、何やら呟いておったな。君の声だ。私の耳は逃してはおらぬぞ。もう一度、しっかりと聞きたい。私の前で呟いてみよ」


「ぇ・・・今、ですか??」


無論だ、と真摯に頷くアラン様。


「えっと―――」



もう一度、と言われても―――わたし、何を言ったかしら?

たしか、あのときはとても嬉しくて―――



「素敵だわ」

「違うな」

「あの椅子も壁の色も可愛いわ」

「うむ、それも、違う」



呟いたことを次々にあれこれとたくさん並べるけれど、アラン様の求めてるものじゃないみたい、ダメ出しばかりが続く。

その他に――?



じーっとわたしを見るアラン様の瞳がさっきよりも細められて、薄明かりにもきらりと光って見えた。

真剣な上に、とても怒ってるみたい。

なかなか答えられないものだから、いい加減にしろって叱られてしまうのかしら。

ドキドキしながらも、他に何か呟いたのかと懸命に考えるけれど、何も思い当たらない。



「えっと――――他に何を・・・?」