パトリックさんが会話に入ったことで雰囲気が柔らかくなったみたい、ルーナさんの表情に笑みが戻ってる。
アラン様だけはまだちょっぴり不機嫌そうだけれど、わたしの頭の上で交わされる三人の会話は和やかものになった。
城の中で、わたしの知らない時を一緒に過ごしてきたのだもの。
意見の食い違いだけで仲違いなんてしないのだわ。
赤ちゃんアラン様のお世話をしたって教えてくれたルーナさん。
今の雰囲気からしても、当時からとても利発でいたずらっこい王女様だったことが想像できる。
パトリックさんも幼い頃には遊んでもらったのかしら。
―――・・・揺りかごですやすや眠る薔薇色ほっぺのアラン様。
精一杯背伸びしたパトリックさんが物珍しげに覗き込んで、ちっちゃな指でぷっくりしたほっぺをつんつんつつくの。
それを叱らずに一緒になってつんつんして遊ぶ、若くて美しいルーナさん。
アラン様の小さな紅葉のような手がぴくぴくと動いて―――・・・
想像した光景が、あまりにも微笑ましくて自然に笑みがこぼれる。
赤ちゃんアラン様、とても可愛かったに違いないわ。
「エミリー。何を、笑っておる?」
「ぁ・・アラン様の赤ちゃんのころのこと、想像してました」
「私の・・か?よく想像できるな?」
「はい。だいじょうぶです。可愛く想像しましたから。・・・ルーナさんはとても綺麗で、強い方ですね。それにとても気さくだわ。アラン様はよく遊んでもらったのでしょう?」
「あぁ、幼き頃はパトリックとともによく遊んだものだ。しかし、ルーナは、昔よりこんな感じだな・・・全く変わらぬ」
言いながら眉を寄せてルーナさんを見るアラン様。
―――快活でお世話好きなイメージのルーナさん。
アラン様はいつも叱られてたのかも。
もしかしたら、苦手なお方の一人なのかもしれないわ。
アラン様の子供の頃、もっともっと知りたい―――
「エミリー、身体をこちら側に」
パトリックさんとルーナさんが和やかに談笑する様子を見ていたら、突然にくるんと回されてアラン様と向き合った。
見下ろしてくるのはいつものお顔。
良かったわ、もうご機嫌は直ったみたい。
「あぁ、まったくそうでした。私としたことがいけませんわ。久方ぶりの愉快な気分、つい時を忘れてしまいます。次回には是非ゆるりと時間を設けて頂きたいものです。そうですわ・・・ご正女様には今宵お泊りいただければ、嬉しいのですが。王族の女性として、したいお話もございます」
それに、その方がアラン様のためにもなりますし、ご正女様の良い休息にもなりますわ、どうでしょう・・と、ルーナさんはにっこり微笑みながらアラン様を見る。
ルーナさんの言う王族のお話って、たぶんお妃教育以外のことよね。
楽しいお話が聞けそうな気がする。
もしかしたら、昔話をしていただけるのかもしれない。
幼いアラン様の内緒なこととか、国王様と皇后さまの若いころのこととか、いろいろたくさん。
それはとっても素敵なことで、お泊まりしてお聞きしたいけれど。
でも―――
目線の上にある少しだけ歪められたお顔を見つめる。
いいですか?って、訊ねてみてもいいのかしら。
アラン様だけはまだちょっぴり不機嫌そうだけれど、わたしの頭の上で交わされる三人の会話は和やかものになった。
城の中で、わたしの知らない時を一緒に過ごしてきたのだもの。
意見の食い違いだけで仲違いなんてしないのだわ。
赤ちゃんアラン様のお世話をしたって教えてくれたルーナさん。
今の雰囲気からしても、当時からとても利発でいたずらっこい王女様だったことが想像できる。
パトリックさんも幼い頃には遊んでもらったのかしら。
―――・・・揺りかごですやすや眠る薔薇色ほっぺのアラン様。
精一杯背伸びしたパトリックさんが物珍しげに覗き込んで、ちっちゃな指でぷっくりしたほっぺをつんつんつつくの。
それを叱らずに一緒になってつんつんして遊ぶ、若くて美しいルーナさん。
アラン様の小さな紅葉のような手がぴくぴくと動いて―――・・・
想像した光景が、あまりにも微笑ましくて自然に笑みがこぼれる。
赤ちゃんアラン様、とても可愛かったに違いないわ。
「エミリー。何を、笑っておる?」
「ぁ・・アラン様の赤ちゃんのころのこと、想像してました」
「私の・・か?よく想像できるな?」
「はい。だいじょうぶです。可愛く想像しましたから。・・・ルーナさんはとても綺麗で、強い方ですね。それにとても気さくだわ。アラン様はよく遊んでもらったのでしょう?」
「あぁ、幼き頃はパトリックとともによく遊んだものだ。しかし、ルーナは、昔よりこんな感じだな・・・全く変わらぬ」
言いながら眉を寄せてルーナさんを見るアラン様。
―――快活でお世話好きなイメージのルーナさん。
アラン様はいつも叱られてたのかも。
もしかしたら、苦手なお方の一人なのかもしれないわ。
アラン様の子供の頃、もっともっと知りたい―――
「エミリー、身体をこちら側に」
パトリックさんとルーナさんが和やかに談笑する様子を見ていたら、突然にくるんと回されてアラン様と向き合った。
見下ろしてくるのはいつものお顔。
良かったわ、もうご機嫌は直ったみたい。
「あぁ、まったくそうでした。私としたことがいけませんわ。久方ぶりの愉快な気分、つい時を忘れてしまいます。次回には是非ゆるりと時間を設けて頂きたいものです。そうですわ・・・ご正女様には今宵お泊りいただければ、嬉しいのですが。王族の女性として、したいお話もございます」
それに、その方がアラン様のためにもなりますし、ご正女様の良い休息にもなりますわ、どうでしょう・・と、ルーナさんはにっこり微笑みながらアラン様を見る。
ルーナさんの言う王族のお話って、たぶんお妃教育以外のことよね。
楽しいお話が聞けそうな気がする。
もしかしたら、昔話をしていただけるのかもしれない。
幼いアラン様の内緒なこととか、国王様と皇后さまの若いころのこととか、いろいろたくさん。
それはとっても素敵なことで、お泊まりしてお聞きしたいけれど。
でも―――
目線の上にある少しだけ歪められたお顔を見つめる。
いいですか?って、訊ねてみてもいいのかしら。