私よりも背の高いルーナさん。

屈んだ拍子に肩からこぼれた銀髪がさらりと揺れて、緩やかにカーブを描く銀糸が灯りに当たって艶々と光った。

イキイキとしていた瞳がちょっぴり陰って心配げに眉を寄せてる表情は、アラン様が時々見せてくれるものによく似てる。

間近に迫った王族特有のつやめく髪と女らしい血色のいい頬。

歳を重ねていても美しくて、同じ女性としてはとてもうらやましく思う。


質問に答えるのも忘れてしまって目の前の美しいお顔に見惚れていると、屈みがちだったルーナさんの姿勢が正されてアラン様の方を向いた。



「やはりお疲れのようですわ。少しお休み頂いた方がよろしいのではないですか?すぐに手配を―――」

「いや、良い。特に大事ないゆえ」



「これは先程かなりの・・」なんて話し始めるアラン様の声を聞いてハッとするのと一緒にどきっとする。



―――もしかして、さっきのことをお話してしまうの?

もしも“なぜそんなに驚いたのですか?”なんて聞かれてしまったら、どう答えたらいいか困ってしまう。

お屋敷の中があまりにもひっそり静かで、ちょっぴり不気味で怖かったなんて、そんな失礼なこととても言えない―――



急いでアラン様の袖を掴んで引っ張りながら見上げる。

・・・こっちを向いて下さい・・・。

つんつんと何度か引っ張ってると、ん・・・?と言って振り向いてくれたので、首を横にふるふると振って懸命に訴えた。


―――アラン様。それは、言ってはダメです―――

念を瞳に込めて見つめていると、ふわ・・と瞳が和らいで口を閉じてくれた。


良かった、通じたみたい・・・。

ホッと胸を撫で下ろしているのも束の間に、訝しさを増したルーナさんの声が耳に届いた。



「先程・・・。アラン様、その先は何ですの?」


まさか彼らが何か・・・と疑問符付きで呟いてるのをアラン様の笑みを含んだ声が遮る。


「ルーナ・・・先は、彼女に聞くが良い」



ずっと腰にあった手に力が入って、前にスススと押し出される。


「ぇっと―――あの・・・」


首を傾げるルーナさんを見て、こくんと息を飲む。

・・・上手くごまかして話せる気がしない・・・。




「・・・さきほどは、すみませんでした。だいじょうぶなんです。ぼんやりしてたのも顔色が悪く見えるのも、たぶん昨日夜遅くまで起きていたせいで・・・。でも、決して体調は悪くありません。ご心配ありがとうございます。あの・・・それよりも。わたしは今夜ルーナさんにお会いできて、とても嬉しくて楽しい気分なんです。だから、もっとお話がしたくて――」



精一杯の笑顔を向けて話続けてると、引き結ばれていた紅色の唇がほぐれて綺麗な微笑みを作った。