急に視界が狭まって事態が飲み込めないままに目を瞬かせてると
「まさかこの時間までいるとは・・・急がせたせいじゃないか?」
と半分笑みを含んだパトリックさんの声が聞こえてますます訳が分からなくなった。
おまけに呼び声に従って駆け寄ってきたジェフさんたちに周りを囲まれてしまい、満天の綺麗な星空と背中しか見えなくなる。
思い出すのは演習場でのことだけれど、こんなところに兵士さんたちはいないはずだし・・・。
遠くの方で「ご苦労さーん。お前たちはもう休んでいいぞー」「お疲れっす!あー腹減ったなぁ」「おつかれ」などと数人の男の人が話す声が聞こえてくる。
だんだんに近づく、ガヤガヤと笑い声の混じった話声とザクザク土を踏む音。
お仕事の帰りなのかしら。
「おい、大変だ。王子様がおられるぞ」
「本当だ、こりゃいかん、礼儀をせにゃ」
「おい、こんな汚い格好でいいのか」
「仕方ねぇだろ」
ざわざわワイワイと口走りながら足音が近付いてくる。
暫くして全ての音が無くなり、姿はみえないけれど並んで頭を下げていることが想像できる。
一呼吸おいて、アラン様が労いの言葉をかけた。
「―――仕事か、遅くまで御苦労であった。ゆるりと休むが良い」
吐息のようなざわめきがさざ波のように広がっていく。
目の前の背中と腕が動いて、「お言葉を賜ったとおりだ。さぁ、早く戻りたまえ」と促し始めた。
「エミリー・・・先程はすまなかった。君の声はしっかりと届いておる。ここは、ベルーガだ。前方にあるのはルーナの屋敷。此方側の灯りが点いておらぬのはいつものことゆえ、人が居らぬ訳ではない・・・もしや、怖いか?」
「いいえ、平気です」
ベルーガと、ルーナ・・・どこかで聞いたことがある。
えっと、確か、おぼろげに―――
“ルーナに叱られる”
―――って、あのときのルーナさん・・・?
それに、ベルーガって兵士さんたちが話してるのを聞いた気がするわ。
何て言ってたかしら―――
目の前にあるパトリックさんの広い背中を見ながら考え込む。
今日、この背中を見るのは2度目ね、なんてぼんやりと思ってしまって頭をぷるぷると振る。
すぐに雑念が浮かぶのはあなたの悪い癖よ、とママによく叱られた。
ザッザと足音を立てて飛び退くように動いたジェフさんたちが遠ざかっていく。
けれど、目の前にある背中だけはピクリとも動かない。
と、さっきとはまた別のザクザクと駆け寄る重い足音がして、息を切らした野太く大きな声が挨拶を始めた。
「大変遅くなり大変失礼致しましたっ。アラン様ようこそ御出下さいましたっ。・・・これは、パトリック様もご一緒とは、歓迎致しますっ―――・・・」
「・・・こちらを気にするでない」
「っ、大変申し訳御座いません!・・・どうぞ此方へ」
「まさかこの時間までいるとは・・・急がせたせいじゃないか?」
と半分笑みを含んだパトリックさんの声が聞こえてますます訳が分からなくなった。
おまけに呼び声に従って駆け寄ってきたジェフさんたちに周りを囲まれてしまい、満天の綺麗な星空と背中しか見えなくなる。
思い出すのは演習場でのことだけれど、こんなところに兵士さんたちはいないはずだし・・・。
遠くの方で「ご苦労さーん。お前たちはもう休んでいいぞー」「お疲れっす!あー腹減ったなぁ」「おつかれ」などと数人の男の人が話す声が聞こえてくる。
だんだんに近づく、ガヤガヤと笑い声の混じった話声とザクザク土を踏む音。
お仕事の帰りなのかしら。
「おい、大変だ。王子様がおられるぞ」
「本当だ、こりゃいかん、礼儀をせにゃ」
「おい、こんな汚い格好でいいのか」
「仕方ねぇだろ」
ざわざわワイワイと口走りながら足音が近付いてくる。
暫くして全ての音が無くなり、姿はみえないけれど並んで頭を下げていることが想像できる。
一呼吸おいて、アラン様が労いの言葉をかけた。
「―――仕事か、遅くまで御苦労であった。ゆるりと休むが良い」
吐息のようなざわめきがさざ波のように広がっていく。
目の前の背中と腕が動いて、「お言葉を賜ったとおりだ。さぁ、早く戻りたまえ」と促し始めた。
「エミリー・・・先程はすまなかった。君の声はしっかりと届いておる。ここは、ベルーガだ。前方にあるのはルーナの屋敷。此方側の灯りが点いておらぬのはいつものことゆえ、人が居らぬ訳ではない・・・もしや、怖いか?」
「いいえ、平気です」
ベルーガと、ルーナ・・・どこかで聞いたことがある。
えっと、確か、おぼろげに―――
“ルーナに叱られる”
―――って、あのときのルーナさん・・・?
それに、ベルーガって兵士さんたちが話してるのを聞いた気がするわ。
何て言ってたかしら―――
目の前にあるパトリックさんの広い背中を見ながら考え込む。
今日、この背中を見るのは2度目ね、なんてぼんやりと思ってしまって頭をぷるぷると振る。
すぐに雑念が浮かぶのはあなたの悪い癖よ、とママによく叱られた。
ザッザと足音を立てて飛び退くように動いたジェフさんたちが遠ざかっていく。
けれど、目の前にある背中だけはピクリとも動かない。
と、さっきとはまた別のザクザクと駆け寄る重い足音がして、息を切らした野太く大きな声が挨拶を始めた。
「大変遅くなり大変失礼致しましたっ。アラン様ようこそ御出下さいましたっ。・・・これは、パトリック様もご一緒とは、歓迎致しますっ―――・・・」
「・・・こちらを気にするでない」
「っ、大変申し訳御座いません!・・・どうぞ此方へ」