「しまったな、すまないね・・・過ぎる」



柔らかな声色とは裏腹に、ブルーの瞳はいつもと違っているように見えた。

それがだんだんと鋭い光を宿していく。

間近で初めて見るその変化が怖くて、どぎまぎする。

いつものパトリックさんじゃない。


メイドさんたちが「何でしょう」「何なりとお訊ね下さいませ」なんて口々に言ってるのが聞こえてくる。



「・・パトリックさん。わたし、メイドさんたちに・・・」



しー、君は黙ってて、と言って振り返ったのと同時にメイドさんたちの声がピタリと止まった。


・・・聞きたいことがあったのだけれど・・・・もう、無理みたい・・・。


目の前にある広い背中の向こう側から、あ、とか、う、とか言葉にならない戸惑う様な声が聞こえてくる。



「君達、すまないね。思わぬ時間を取らせてしまった。そろそろ仕事に戻った方が良くないかい?長に呼ばれてしまうだろう」


庇うように差し出されてる腕は優しいけれど、聞こえてくる声は厳しい色を含んでいる。

メイドさんたちが色めき立つ感じが伝わってくる。



「た、大変」

「・・・っ、そうですわ。早く戻らないと」

「ラムスター様・・・申し訳御座いません」

「そうですわ・・早くお渡しして戻らなければ―――」



「君たちは、我を忘れてしまっていたようだね。君たちは規律正しいアルスター家のメイドだ。アルスター殿は、今の私よりも怖い筈だ――――あぁ、君はもっと下がった方がいい・・・君もだ―――・・・さぁ、エミリー、待たせたね。有り難く受け取るといい。彼女たちの真心だ」



逞しい体が、す、と脇に避けられて広がった視界に、贈り物の籠が大きく映る。

精一杯に腕を伸ばして差し出されているそれは小刻みに震えていた。



「あの!みんなで一つずつ中に入れたんです。心を込めました!御迷惑でなければ、是非、お受け取り下さい!」



パトリックさんの怖い声が利いたのか、おとなしくなったメイドさんたちは後方に並んで頭を下げてる。



「・・・迷惑なんて、そんなことありません。あなたたちの心がこもってるんですもの。こんな嬉しいことはありません」



受け取ろうと手を伸ばそうとしたら、優しい腕にやんわりと遮られた。

パトリックさん経由で贈り物が手に届く。

じっくり見れば、急にこしらえたとは思えないほどの彩り良い出来映え。