「私たち庶民の憧れなのです。お会いできて光栄で御座います」

「あこがれ・・ですか?」


―――わたしに・・・?


思ってもみないことを言われて、気恥ずかしくなる。

アラン様やパトリックさんに憧れるのは分かるけれど。

わたしに、なんて・・・。



「はい。そうなのです!他国の姫様や並み居るお嬢様方を散らして、ただお一人、王子様のお心を射止められたのですもの。私達にとっては驚きもありますけど、それ以上に、尊敬してしているのですわ!」


一人が瞳をキラキラと輝かせ興奮気味な口調で話すと、さっきまで遠慮がちにしてた子も一歩前に進み出て両手を胸の前で組んだ。

たっぷりと熱を含んだ視線が強く注がれる。


・・・こんな感じの瞳、見たことがある。

そう、あの時演習場で見た兵士さんたちの瞳に似てる。

囲まれたときの恐怖を思い出す。

この子たちは女の子だけれど、なんだか怖く感じる。

メイドさんたちは興奮しているようで、籠を持った子を押しのけるようにしてじわじわ前に進み出ていた。

その何とも言えない迫力に耐えられず計らずも一歩後退りをすると、パトリックさんの腕がぴくんと動いた。



「私達、お目にかかれて幸せだって言っていたんです!だって、こんな素敵な予想外の出来事なんですもの、皆興奮しています!」

「これをお渡しする役目も決めるのも大変でしたのです。もぉ大騒ぎで・・」

「そうなんです!あぁでもでも、本当に。ほんとにやっぱり噂通りなお方ですわぁ・・・」

「全くですわ。あのイライザ様でさえも敵わないんですもの」



矢継ぎ早に、あちらこちらから早口で繰り出される言葉。

お顔を追いかけるだけで大変で目がまわりそうになる。

でも今確かイライザさんって言ったわよね?

やっぱりとても気になってしまう。

・・・この子たちになら、聞いてもいいかしら。



「あの・・・あなたたちに、聞きたいことがある――――っ・・」



不意にそれが起きて、言葉を飲み込んで瞳を瞬かせる。

パトリックさんの腕が素早く動いて乗せていた手が外れると同時に、両肩をやんわりと押された。

自然に一歩後退りをする。

・・・急に、どうしたのかしら・・・

不思議に思いながら見上げると、内緒の声でこう言った。