―――何を思っているの?

たまには、わたしの言うこと聞いてください―――


そんな思いを込めて、くいくいと何度も引張ってると、小さな溜め息と一緒に大きな手が背中を摩り始めた。


「君が、か?・・・その様なことを申すな。もうすぐ1時になる。無理せず眠れ」



今度は不機嫌そうな声を出して威嚇してきたので、一瞬怯んでしまった。

けれど、君にはそんなこと出来ないだろう?、と言われた気がして少しむっとしてしまう。



―――確かに、朝起きられなくて、いつもお寝坊さんだけど。

あまりに良く眠るものだから、パパやママに『眠り姫』と呼ばれたこともあるけれど。

わたしだって、頑張れば出来るわ。


何だか意地になってしまって、負けたくない気持ちになる。


いつもは抱き締められていつの間にか眠ってしまってるけれど、今日は違うもの。

きっと起きていられるわ。

大丈夫―――――


引張っててもどうにも動く気配がないので、摩りつづけてる重い腕をよいしょと退けて、身体を起こした。



「大丈夫です、無理はしてないわ。だから・・・ね?」



寝かせようと一生懸命肩を押してみるけれど、固くて男らしい体はわたしの力じゃびくともしない。



「アラン様、力入れてるでしょう?ダメです」


「・・・入れてなどおらぬ。全く、君は・・・どうしたものか」


「ぇ―――っ?きゃっ」



腕を掴まれたと思ったら、あっという間に視界が傾いて、気が付いたら腕の中にすっぽりと入れられて、ぽすん・・と寝かされていた。

銀の髪がさらさらと頬に当たってとてもくすぐったい。

背中の下に腕が差し入れられてある分、今度はさっきよりもお顔が近くてドキドキする。



「・・・・男の力に敵うと思うか?」

「ぁ・・あの・・・」



・・・これは、やっぱり怒ってる・・・のかしら。



「何故言うことを聞かぬ。この状態で私が眠れるはずがないだろう」



分からぬか、と武骨な指先がゆっくり鎖骨を撫でて肩へと移動していく。

優しくそっと触れるそれは、レースの肩紐をずらすことなく二の腕を通って手首まで下りていった。



「全く・・・このような細い腕で・・・・。これでも、制御しておったのだが―――」