柔らかなクッションの海に沈められて、ふんわりと散らばった髪。

それを、指先で軽く梳いて整えてくれる。

時々肌を掠めるその甘い感触に心地よくなって、ぽやぽやとしながらも頬に手を伸ばした。


指先にサラサラと滑らかな肌の感触が伝わってくる。

毎日遅くまで起きてるのに、肌はキメ細かくてちっとも荒れていない。

悔しいくらいに綺麗な肌。


精悍な頬・・・尖った顎・・・

順番に中指を滑らせてると、絡め取られてシーツの上に戻されて、瞼に唇が降って来た。



「エミリー、目を閉じよ。・・・君が眠るまで傍に居るゆえ」



逆光でブルーの瞳は見えないけれど、そう囁いてくる声は少し掠れている。



・・・きっととても疲れてるんだわ。

アラン様の方が数倍忙しいんだもの。

ほんとうなら今頃自室ですやすや眠ってるはずだったのに。

なのに、わたしが起きてしまって、おまけに騒いでしまったから・・・。



罪悪感がむくむくと湧きあがってくる。

先に寝てろと言われていたのに。

言い付けを破ったわたしをあたたかく包んでくれて、感情のままに泣いたのも大きく受け止めてくれた。


・・・考えてみれば、アラン様に甘えてばかり・・・。



・・・せめて今日くらいは。

今夜くらいは、わたしが包みこんで疲れを癒してあげたい。

いつもみたいにキスもしてこないし、今夜は身体を重ねるつもりもないみたいだから・・・。




「アラン様こそ、お疲れなのでしょう?」




どうしてなのか不思議に思いながら見つめる。

アラン様はずっと同じ体勢のまま。

もしかして、わたしが眠るまで―――?


とにかく横になって貰おうと、ナイトウェアの胸のあたりを掴んで斜めに引っ張ると、肘を曲げて素直に隣に沈んでくれた。

お話を聞いてもらった時の姿勢になってる。

やっぱりお疲れなのよね。



「アラン様?きちんと横になって下さい。・・・・今日は、アラン様が眠るまでわたしが起きてますから」



服を引っ張りながら向かい合うように横向きになるけど、何故だかちっとも動いてくれない。

さっきは言うこと聞いてくれたのに・・・。


無言のまま見下ろしてくるお顔をじっと見つめて、ちょっぴり唇を尖らせる。