「―――あの、アラン様・・明日、本当に一緒に行ってもいいのですか?」


声を掛けると、口角が僅かに上がって微笑む。

いつもに戻ったお顔を見てホッとしていると、手が背中にまわってぐぃっと引き寄せられた。

ぽすん・・・と、逞しい胸に頬が埋まる。



「無論だ。寧ろ、明日は君がいた方が良い。しかし・・・少々遠出するゆえ、帰りが遅くなるが・・・」



後頭部に手が差し入れられていて、どんどん胸に押し付けられていく。

そんな中、なんとか頭を動かして見上げようとしてると、手が緩まったので出来るだけ胸から顔を離した。



少しでも多くアラン様のお顔を見たいもの。

どんな小さな変化も見逃したくない。

いつも何を考えてるのか分からなくて戸惑うことばかりだけど。

何も聞かなくても分かるようになりたい。

パパとママみたいに。

国王様と皇后さまみたいに――――




「・・・はい、構いません。一緒に行きたいです。・・・それで、何処に行くのですか?」

「―――そうだな・・・それは明日の楽しみ、ということでは駄目か?」

「楽しいところなのですか?」



ワクワクした気持ちをちょっぴり乗せて見つめると、眉を寄せて、微かに口角を上げて、少しだけ首を傾げた。



「―――・・・いや、そのように、期待するほど良い場所とは言えぬのだが・・・」



珍しく、もごもごと言い淀むアラン様。

もしかしたら、これが困ったお顔なのかも。

メイの笑顔が思い浮かぶけれど、内緒にしておこうと決めた。

このお顔は、わたしだけのものだもの―――


なんだだかとても幸せな気持ちになって、身体を預けて胸に顔をうずめる。

あたたかくて、広くて、とても安心できる。

今は、わたしだけの王子様。



「いえ、十分です・・・どんな場所でも一緒にいられれば、わたしは幸せで――――っ・・」



そう言った途端にがばっと離されて、顎に指がかかって固定された。

あまりにもすばやくて、驚いて目を見開いてしまう。

でも、ブルーの瞳は目ではなくて違うところを見てて。

それは顎のあたりにあるようで・・・。


潤んだ瞳がゆっくり動いていく。

それは、身体の輪郭を撫でるようにしてて、とても色気のある瞳で、声をかけようとするけれど唇が震えてしまって上手く動かない。

心臓の音がとてもうるさくて、このままだとアラン様に聞こえてしまいそうで心配になる。



―――やっぱり今日のアラン様は、少し変。

いつもだったら、キスをしてくれるのだけど―――



「ぁ・・ぁの・・・アラン様・・・?」



おずおず声をかけると、眉がちょっぴり動いた。

髪を掻き分けて額にキスを落としたあとの瞳が、切なげに揺れてる。



「どうかしたのですか?」

「何でもない・・・。もう遅いゆえ、君は―――――」



すとん・・と体が倒されて、覆い被さってきた。

両方の腕は身体の両脇にあって肘は伸ばしたまま。



「―――もう・・・眠らねばな・・・」