「君が私に尋ねごととは、珍しい・・・。何でも答えるゆえ、申せ」



そう言って、アラン様は肘を立てて半身を起こした。

見下ろしてくるブルーの瞳がとても力強くて、ドキドキする。

生まれながらの王子様。

高貴で綺麗な方々に“是非”と望まれる方。

そんなお方がわたしの旦那さまになるなんて、未だに信じられない・・・。


銀の髪がサラサラと肩から零れ落ちてくる。


―――綺麗・・・。

羨ましいくらいに、癖のないストレートな髪。

流れる銀糸を見つめていると、無意識に手が伸びる。

指先に絡めても留めておけなくて、するすると零れてしまう。

まるでシャルルのしっぽみたい。

捕まえても捕まえても逃げていく。



―――今夜は、このまま朝までいてくれる?

わたしが目覚めるまで、傍にいてくれる―――?



そう言いたいけれど、恥ずかしくて言葉に出来ない。

大好きな香りがふんわりと漂ってくる。

アラン様の髪の香り。

揺れる髪にそっと指を絡めてはさらさらと溢す・・。

感触を楽しんでいると、幾度目かに武骨な指が延びてきてするっと絡め取られた。

そのまま握られて唇が落とされる。



「・・・尋ねたいことは、どこに消えた?」

「あ・・・」



こくんと、息を飲む。

せっかくいろいろ考えてあったのに、全部忘れてしまっていた。

どうやって聞こうかしら。

いざとなると、緊張してしまう。

それに、今夜のアラン様はなんだかとても色っぽくて。

思考も目も感覚までも何もかもが奪われて、何も考えず胸に顔を埋めたくなる。



「―――あの・・」遠慮がちに声を出したら「申してみよ、言い難いことか?」と優しい言葉が返ってきた。

話しやすい雰囲気を作ってくれてるのが分かる。



「―――アラン様は、毎晩城下にお出掛けしてると、今日聞いたのですけど。それは、公務、なのですか?」

「いや、そうではない。どちらかと申せば、個人的な用だな・・・何故だ?」

「わたし、もうすぐアラン様の妃になるんですもの。だから、知りたいんです。毎日どんなお仕事してて、どんな方とお会いして、どんなことを考えてるのか。・・・城下に行くのは何のご用なのですか?」

「・・・人と、会っておる」

「人、ですか・・・?お帰りは、今日も遅かったのでしょう?多忙でいらっしゃるのにお体を壊されるのではないかと、心配してます」



―――その、人って、誰―――?


じっと見上げてると、ふぃっと横を向いてしまった。

口元に手を当てて、無言でいる。


何を、考えてるの?