―――キィ・・・ぱたん・・・


扉の開け閉めする音と、微かな衣擦れの音。


カチッと灯りを弄る音。


まどろみの中、耳が拾う、微かに立てられる音たち。



『――――全く、君は・・・。何故、ここにおる?ここで眠らぬように、と申しおいた筈だが・・・――――』



―――・・・今度は・・・アラン様の声が、聞こえる気がする・・・・―――



体が揺れて、ふわっとした浮遊感が身体を襲って、暫くの後柔らかいものが背中に触れた。

そのあと、大きくて温かいものが頬にあたって、髪がすーと引っ張られる感触がした。

それがとても心地よくて、目覚めかけていた意識が、ゆっくりと沈んでいく。



「・・・ん・・・」



息と一緒に小さな声が漏れる。

と、あたたかな感触は頬の上でぴたりと止まって、そのあとずっとそこに留まった。


―――これは、この感覚は。

わたしの、大好きなものだわ―――



離れてほしくなくて、無意識に伸ばした手が柔らかな布の上を滑り、あるモノを探し求める。


行き当たった、弾力のある壁のそれを指先で絡め取り、しっかりと掴んだ。



――――これでまた・・・安心して眠れる・・わ――――


再び、まどろみの中に落ちる。



『・・・参ったな・・・』



すぐ横が沈み込んで、身体が、ふわっとしたものに包まれた。

あまりにあたたかくて気持ち良くて、そこに頬を擦り寄せていく。


―――ずっと、こうしていたい。

おねがい、このままでいて―――


すると、急にそれが、なくなった。

その拍子に、掴んでいたものが指の間からするんとすり抜けた。



―――待って・・・行かないで・・・―――



『私なら、ここにおる』



髪が引っ張られたあと、耳の辺りに、何かが触れた。

気のせいか、リップ音のようなものが聞こえる。

ちょこちょこと触れるそれが、どんどん背の方に移動していく。


「・・・ぅ・・ん・・・」


・・・なんだか背中がくすぐったい・・・。

と思った瞬間、ちくん、とした刺激に襲われて身体がぴくんと動いた。



「・・っ、ん・・・」



二回、その刺激に襲われて、重い瞼をゆっくりと開ける。



―――今、何が、起こってるの―――?



刺激のあった辺りが、また、くすぐったく感じる。


・・・えっと。

これ、何かしら・・・。


目の前に、太めの棒のようなものが床から生えてるのがぼんやりと見える。

それがゆっくり動いてきて、肩をそっと掴んだ。


うつ伏せになっていた身体がゆっくり横を向かされていく。


これは―――。



「・・・アラン様・・?」



「―――っ、すまぬ、起こしたな。我慢できなかったゆえ・・・許せよ」