「全く、君は・・・。良いか・・・ゆっくり答えを探してくれれば。私は、急がぬゆえ・・・」



大きな掌が頬に触れて、髪に触れて。


そぉっと触れてくる指先がくすぐったくて・・・。


・・・ドキドキして・・・


まるで、魔法にかけられたみたいに動けなくて。



優しく見つめられるたびに


そっと触れられるたびに


このままどうされてもいいと思った。



あの頃のアラン様は、今みたいに強く抱き締めたりしてくれなかったけれど、優しくそっと包み込んでくれたっけ。



思い出すと、胸がトクンと疼いて息が苦しくなる。

てのひらでぎゅっと胸を押さえても、どうしようもないほどに、どきどきする。



“伺った話なんですけれど、このところ毎日―――”



ジェシーさんの囁きが、遠くに霞んでいく。

心が、幸せで満たされていく。



そういえば。

あのときの答え、はっきりとは聞いていないけれど。

メイの言うこと、ちょっぴり合ってるのかもしれない。


でも、メイはアラン様とそんな会話したことなんて知らないはず。

だから今のは、私が元気がないのを見て気を使って言ってくれたことよね。


天井を眺めるメイを見つめる。




―――まだ、呆れてるのかしら。

心配性すぎるところもあるけれど、あなたはほんとうに、賢くて、優しくて、素敵なひと。


あなたがわたしのメイドになってくれて、ほんとうに良かった。

あなたに出会えてよかった。

こんなわたしだけど、これからもお願いします―――


ドキドキが止まらないまま、メイに声をかける。




「ありがとう、メイ。おかげで元気が出たわ」



・・へ?そうきますかぁ。違うんですけどねぇ。その答え、いまひとつです・・・と上を向いたまま言ったあと、背もたれから体を離したメイの口から、さっきとは違う意味の溜め息が出る。



「もういいです、エミリー様はそのままで。そんなところも可愛いと思われてるのでしょうし・・・」

「・・・そのままでって?」

「いいんです。深く考えないで下さい」



メイは空っぽになっていた自分のカップにお茶を注いで、ハートのお菓子を一つ口に入れた。

口を尖らせて、んもうっ、なんて呟いた後

急に何かを思い出したのか、そういえばと言って、ぱっとこちらを向いた。