その笑顔が、見る間にしぼんでいく。

力の入っていた肩がすとんと下りて眉までもが下がった。

それはとても残念そうに見えて・・・。



「メイ、どうかしたの?」


はぁ・・・、という声と一緒に、目の前の頭がかくんと傾く。


「どうもこうもありません。・・・もぉ、エミリー様ったら。その顔、全く納得してませんよね?」


確かに、感情は伝わり難いお方ですけどぉ~でもぉ~と嘆くように言うと、メイは背中を椅子に預けて天井を眺めた。



「納得してないなんて、そんなことはないわ。・・っと、その、ただ驚いているだけなの」



慌てて言ってみるけれど、メイは呆れてしまってるみたいで上を向いたまま動かない。

驚いたのはほんとう。でもそのすぐあとに


そんな風に見てるのはメイだけかもよ?


なんて思ってしまったことは、内緒にしておかなくちゃ。

ますます残念がられそうだもの。





アラン様の顔が思い浮かぶ。

少しだけ怒ってるような、真剣な表情。


・・・前に、こんなことがあった。

つい最近のことのように思い出す、あのときのこと。


まだアラン様の気持ちを知らなかった頃。


あれは、この部屋にきて間もないとき。


どうにも身分違いなお部屋に慣れなくて。居心地が悪くて。

どうしても元のお部屋の方に戻りたくて、何度かお願いしたことがあって―――




「前のお部屋に、戻りたいのですけど・・・ダメですか?」

「駄目だ。それだけは出来ぬと、何度も申したであろう。君の部屋は、ここしかない。変える気などない」


決められたことに反抗するわたしを、諭すようなブルーの瞳が見下ろしてきた。

眉が寄せられていて、声色には少しだけ怒りが含まれてる。


「でも、わたしには・・・」


なんとか分かってもらおうとしたのに「でも、ではない」と、長い指が動いてる唇を止めた。



「―――この部屋を君のものとした訳、分からぬのか?」


「守り易いから・・・」

「違う、それだけではない」


「・・・人目につきにくいから」

「それも、違う」



全部否定されて、答えに困ってしまって黙って見上げていたら、真摯な表情がふと緩んで柔らかな微笑みを作った。