けれどやっぱり、いくら身に覚えがなくても、アレが背中にあるのは事実なわけで・・・。

どう考えてもこれは、眠ってるうちに内緒でこっそりアラン様がお部屋に来たということよね・・・?



来たのなら、起こして欲しかったわ。


『お仕事お疲れ様、おやすみなさい』って、ちゃんとご挨拶したいもの。


前からそうお願いしてるのに。


なのに。





「眠る君を起こすのか?・・・・それは、今は、少々難しい―――――君は、そんなことは考えずとも良い」



って微笑むだけなんだもの。

確かに寝起きは悪いけれど、起こされればきちんと目が覚めるわ。

なのに・・・アラン様は、優しすぎる・・・。



でも、わたしって・・・。

あんなことされても起きないわたしって。

これからアラン様の妻になるというのに、ものすごくダメダメかも・・・。

内緒でこっそり印をつけられたとしてもそれに気付かなくてぐっすり眠ってるなんて、自分でもホントに呆れてしまう。

なんだか、落ち込んできちゃった・・・。





“―――決して”



深い反省の念にとらわれていると、ふわ・・と、真摯なブルーの瞳が脳裏に浮かんだ。

そういえば、あのとき。




“決して半端な気持ちではない”




あの時も、シルヴァの屋敷から帰ったあの日も、アラン様は眠るわたしを起こしてくれなかったっけ。

いつのまにか刻印が増えてて、朝、洗面室の鏡を見てとても驚いたことを思い出す。




『愛の証』



あの時は全然分からなかったけれど。

馬車の中でも、ベッドの中でも、口に出してはくれなかったけれど。

言葉は何もなかったけれど。

アラン様は、きちんと想いを伝えてくれていた―――





リリアさんの指が置かれた肩の辺りを、そっと辿ってみる。



―――コレ・・・。

わたしには見えないけど、ここにあるコレ。

リリアさんたちに見られてしまってとても恥ずかしいけれど、やっぱりとても嬉しい。

アラン様の想いが、嬉しい―――




幸せになって、それから不安になって、そして嬉しくなって

おまけに、反省して。

今日は、心がとても忙しい日。

アラン様のことを考えるだけで、こんなにいろんな気持ちになれる。


不安になったり心配したりもするけれど、みんな総合すると、わたしは幸せをいっぱいもらってるんだなって、思う。

アラン様に会えて良かった。


過去をふわりと思い出したりして、幸せな気持ちに浸っていると背中から、ふぅ・・、と深いため息が聞こえてきた。