〈100万PV超え感謝 おまけの話3〉


爽やかな風が吹く昼下がり。

エミリーはテラスで独り椅子に座っていた。

婚儀まではもうすぐ。

お妃教育や衣装の採寸などで毎日忙しくて、僅かに生まれる暇な時をここで過ごすことに決めていた。

たまに庭に出たいとも思うけれど


“出来れば外出は控えてほしい”

と切なさと威厳を込めたブルーの瞳に見つめられ少し脅されてもいて、理不尽と思いながらも反論することも出来なくて、素直に従っている。

もしも黙って外に出たとしても脅しが実行されることはないだろうけれど、やっぱり出てはいけないと思うのだ。

あのブルーの瞳には、弱い・・・。



か細い腕に嵌められているのは細いリング。

アラン様の愛の証であるこれは“日常生活に支障のないように”と職人に命じて、彫り物が彫れる極限まで細くさせて作らせたって教えてくれたっけ。


とても軽くていいのだけれど、たまに嵌めてることを忘れてしまうことがある。


「リングは重くないか?」


ことあるごとにそう聞いてくるアラン様には、もちろんそんなことは言えないから内緒。




小花模様のワンピース、肩には少し厚めのショール、膝にはブランケットと読みかけの本。

対防寒、完全重装備ともいえるこの姿は

「エミリー様、テラスで過ごされるのでしたら、これは必須です!・・・いいえ、風邪を召されたら大変ですから、お持ち頂かないならテラスもダメです!」

と、有無もなくメイから手渡されたもの。


気候的には冷えた風が吹いてはいるけれど、日だまりにいればまだかなり暖かいのよ?

ぽそりとそう言ったら、日溜まりなんてダメです、と叱られてしまった。


理由は、日に焼けるから、だそう。


温かい紅茶を飲み、カップをテーブルに置いて苦笑する。



「メイったら、ほんとに心配性なんだから。―――っ・・・ぁ、まって・・・」


突然テラスに疾風が吹きこみ、本のページを勝手に捲ってしまった。

慌てて本のページを抑えるも、かなりぱらぱらと捲られてしまっている。



「やっぱり、コレが必要ね・・・」