医務室の扉を開けると、待ちかねていたのか、すぐにフランクさんが出てきて笑顔で迎えてくれた。


「あぁ、エミリーさん。お待ちしておりました。此方へどうぞ―――」




“良いか。フランク、決して二人きりになってはならぬ。分かっておろうな”

“分かっております、王子様。リードもおりますから大丈夫ですよ”

“・・・リードとは・・あの助手か・・”




「リード、何をしているんですか。ほら、こっちに来なさい」

「ふっ・・フランクさんっ・・。あの、ここでは駄目でしょうか」



治療室の中、エミリーが座った場所から2メートルほど離れた場所で、リードがカチコチに固まっている。



――フランクさんはともかく、この方の健診の助手など、私に出来るはずもない。

相変わらずあの護衛は私を警戒して睨んでいるし。

第一、健診には、ち・・聴診器があるではないか・・・。

一体何処に目を向けたらいいのか―――


冷たい威厳を放つブルーの瞳が思い浮かぶ。

リードは息を飲み、堪らずに身震いをした。

私などが、傍にいてもいいのだろうか・・・。



「リード?早くしなさい」


眼鏡をギラリと光らせてフランクが強めに言うと、リードは渋々といった感じでノロノロと近付いてきた。

シリウスの眉がピクッと動く。



「あの、リードさん、どこか具合でも悪いのですか?随分汗を掻いているわ。大丈夫ですか?」



心配そうに顔を覗き込むアメジストの瞳。

リードの胸がきゅんっと痛む。




~~~っ・・全くもって貴女のせいなんですがっ。



「な、何を言ってるんですか。私は全く何とも平気ですからっ・・。貴女のようにか弱くありませんから、余計な心配はしないで下さい」


リードは純真なアメジストの瞳から逃れるように、そっぽを向いた。



「それなら良いですけど」


――リードさん、相変わらずだわ。なんだかホッとする。


久々に聞くリードの物言いに、エミリーはクスッと笑みを漏らした。




それを見たリードの顔がさらに赤くなっていく。


~~~っ・・・あ・・・貴女は、どうしてそう無防備に笑うのですかっ!



ドキドキと脈打つ心臓。

制御しようにも、どうにも赤く染まっていく頬。


堪らずに、顔を隠しながらじりじりと後退りをした。



「―――ふ・・フランクさん・・早く、早く終わらせましょう」


「そうですね。これ以上はリードが持ちませんね」



クスッと笑った後、フランクはエミリーを見た。

当の本人様は会話内容が理解できず、キョトンとしておられる。

全く罪なお方だ・・・。



「エミリーさん、此方を向いて下さい」