「アラン様、わたしも、アラン様を愛しています」


アランは嬉しそうに微笑み、か細い手首にリングを嵌めた。

月明かりにエミリーの肌が白く輝き、手首のリングがそれに負けないほどにキラキラと光りを放った。

重なり合った満月の月が次第に離れていく。



「リンク王様とシェラザード様はお会いになれたかしら」

「大丈夫だ。きっと会えておる――さぁ、塔に戻るぞ」


そう言ってアランは軽々と身体を抱き上げ馬に乗せ、城へと戻った。



城の中は皆が寝静まっていて、しんと静まり返っている。

塔の玄関に行くと、警備兵の目が驚いたように見開かれ、顔が見る間に崩れていき嬉しそうに道を開けた。

3階の警備兵たちも、傍に走り寄ってきて感慨深げに頭を下げ、お互いに顔を見合ってにこにこと笑った。

エミリーはいつの間にか腕の中で眠っていた。

そのため皆は声を殺したまま、体中で喜びを表現していた。



正室の白い扉を開け、シフォンのカーテンの中にそっと身体を下ろした。

髪を整え、頬を撫で、寝顔を愛しげに見つめ離れようとしたその時、エミリーのか細い指がキュッと服を掴んだ。


潤んだアメジストの瞳が見上げている。



「すまぬ、起こしたな」



「行かないで・・・お願い、このまま傍にいて」



エミリーは身体を起こし、ポケットから銀の鍵を取りだして、震える指で大きな手にそっと乗せた。



「アラン様に、コレを使って欲しいの・・・」



エミリーは、そう言うのが精いっぱいのようで、すぐに頬を染めて俯いてしまった。


ギシッと音を立てて沈み込むベッド。

ブルーの瞳が愛しげに俯くエミリーを見つめた。






「エミリー愛しておる」




耳元で甘く囁かれ、耳にそっと唇が触れた。

ゾクッと身体が震えてしまう。

後頭部と背中が支えられ、いつの間にかベッドの上に横たわっていた。

唇が甘く塞がれ、身体の奥底がジンと痺れて動けなくなっていく。

力が奪われ、柔らかな身体はアランのなすがままになっていた。


柔らかな胸、柔らかな肌、武骨な指と唇がエミリーの五感を絡め取っていく。

触れられる度に甘い吐息が漏れ、身体がピクンと震えた。

熱い唇が首に這わされ、ある場所で落ち着き、じんわりと熱くなった。



「っ・・アラン様・・・お願い・・もう―――」



「良いか?」



「――――っ!」


逞しい背中にか細い腕が絡みつき、ベッドが何度も軋む音を立てた。

背中にまわっていた腕が、力尽きたようにゆっくりベッドの上に下りていく。

襲い来る恍惚と飛びそうになる意識の中で、エミリーは夢中でアランの頬に手を伸ばした。



「アラン様・・キスして――――」




シフォンのカーテンの中、二人は重なり合たまま、何度もお互いの存在を確かめあった。