愛しい身体の感触を噛みしめるようにブルーの瞳が閉じられた。


「シェラザード、もう良い。君のことだ・・・私のためだと思い、決断したのであろう?今、こうして私は君に会えた。君は私に会いに来てくれた。それだけで私は幸せで満たされる」

「リンク様・・・・」


「シェラザード、愛してる。今も昔もこれからも。ずっと変わらずに―――」


「私も・・愛しています」


リンクはシェラザードの唇を愛しげに見つめ、自分の唇をそっと重ね合わせた。

幾年もの時を隔て永遠の想いを確かめ合う二人。

幾度も強く甘く想いを重ね合った後、リンクはシェラザードの頬を大きな手で包み込んだ。



「私を、共に連れて行ってくれるか?」


「はい・・・リンク様・・・御心のままに」



表情豊かに満足そうに微笑むリンクの顔が、徐々に無表情なものに変わっていく。

アランの体から金色の光がふんわりと出ると、体がふらっと揺れた。



「アラン王子、あなたにこれを授けます」


シェラザードの手から雫の形をした小さな石が渡された。

それはクリーム色で、月明かりにかざすと青い光を放った。



「それは、月の雫です。私の力を込めました。あなたが迷ったとき、その石が良く導くでしょう」


エミリーの身体から出た金色の球が、光りを放ちながら上に向かっていく。

その光の球がほわほわと動き、綺麗な女性の姿に変わっていった。

エミリーの膝ががくりと崩れ落ち、倒れていく。

アランはふらつく体を何とか動かし、身体が床に当たる寸前で抱き止め、上で光る女性となったシェラザードを見上げた。

その隣で、若い男性がにこやかに微笑んでいた。



「我が子孫よ。体の貸与感謝致す。その娘、決して離すでないぞ。私の二の舞にならぬよう―――」


「リンク王よ。長きに渡り、ご指導感謝致す。彼女のことはご心配なきよう。この手を離すつもりは御座いません」


リンク王とシェラザードは手を繋ぎ、にこやかに微笑みあい、小窓から月を見上げた。

月は、時が止まったかのように重なりあったまま動いていない。



「シェラザード、参るぞ」


「はい、リンク様」


互いに身体を庇いあい、二人は月の光の中に溶け込むように消えた。




「エミリー、戻って参れ。エミリー」


頬を愛しげに撫で、何度も名前を呼んだ。



「ん・・・・アラン様・・・シェラザード様は?」


「リンク王と共に月に帰った。疲れたであろう。さぁ、もう部屋に帰るぞ?」




「待って、アラン様・・・わたし、塔にはもう・・・帰りません」