そのあと、何をするでもなくずっと心地よい優しい腕の中にいたような。

他に何かあったのかしら。

でも、どうしてアラン様がここに?朝だから起こしに来たとか?でも、おかしいわ。ベッドの中にいたってことは・・・。

まさか一晩中?まさか、わたし―――!?

ドキドキしながらそっと布団の中を覗き見た。瞬間、声にならない息を漏らしてガバッと身体を起こした。

布団を手繰り寄せる手が少し震えている。

着替えた覚えがないのに、身にまとっていたのはキャミソールのような薄い下着一枚。

それはシルヴァの屋敷からずっと身に着けていたもので。

えっと・・・これは・・・つまり。どういうこと??頭の中をいろんな想像が駆け巡る。


「ぁ・・・あの・・アラン様、どうしてここにいらっしゃるのですか?」

青くなったり赤くなったりして、くるくる変わる表情を無言のままずっと見つめていたアラン。

頬を赤く染めて、オズオズと尋ねてくるあまりの可愛さに、堪らずにクスッと笑みを漏らした。


「もっと早くにその質問を受けると思っていたが」

いつの間にかアランはベッド上に腰かけていて、エミリーの傍に体を寄せていた。

「案ずるな。何もしておらぬ。昨夜は、君を抱き締めてベッドに運んだんだが」

言いながらアランの武骨な指が布団を握りしめているか細い指をすっと撫でた。

「君は、いつの間にか眠っておった。ドレスのままでは眠り難いだろうと、脱がせたのは良いが、この指が私の服を掴んでどうにも離さぬ。それが、こんなにか細いのに、力が強くて・・・どうにも私には解けぬ故、やむなく横で眠ったわけだ」

武骨な指が長く美しい指を愛しげに絡め捕った。

―――え!?脱がせたって・・アラン様が?

エミリーの薔薇色に染まった頬がますます熱くなっていく。

「あの、とてもご迷惑をかけてしまって。アラン様がわたしなんかの―――ごめんなさい」


服を脱がされたのに、何も起きなかったなんて、やっぱりこの方にとってわたしは妹。なのに、服を掴んで引き留めてしまうなんて、こんなことを未来のお妃さまが知ったらどう思うかしら。

自分のしてしまったことがあまりにも無礼で、身の程知らずで落ち込むエミリー。

そんな表情をそっと覗き見たアランの瞳が、少し呆れたような色を見せた。


「昨夜私が申したことを、君は分かっておらぬのか?全く、君は」

「ぇ・・・?」

「まぁ、良い。その件については、これからじっくりと君に分かって貰うとする。それよりも今はもう一つの私の質問に、答えて貰おう」


ブルーの瞳が鋭く光っている。こんな顔今まで見たことがない。少し、怖い・・・。

ベッドがギシッと沈みこみ、逞しい体がスーッと前に移動してきた。


「君が今申しておった“シャルル”とは何だ?“大好き”とも申しておった。正直に申せ」