小道では部下たちが馬から降り、呼ばれたらすぐに駆けつけられる体制を取りながら

アランたちが消えた森の中を見つめている。

━遅い・・・・アラン様達が森の奥に消えて随分と経つ。何か起こったのではないだろうか・・・・。

指示はないが、我々も森の中に入るべきではないか・・・━

そこにいる誰もがそう考え始めたとき

茂みの奥に人影が2つ見えてきた。


ゆっくりと近付いてくる人影に、部下たちはホッと安堵の息をもらす。


小道に戻ってきたアランは何やらマントに包んだものを大切そうに抱えている。

よく見ると、少女のようだ。


「アラン様・・・・。その少女は?」


部下たちは抱えられている少女を訝しげに見ている。


その部下たちの視線を無視し、アランは言った。



「戻るぞ。この者は城に連れていく」



ジェフは困惑していた。

冷徹で、優しさの欠片もないと言われているアランの取った一連の行動に。

このような森の中で、見たこともない衣装を身に着けた得体のしれない少女を連れ帰るなど、いつものアランからは想像もできない行動だ。

もし、連れ帰るとしても自ら抱き抱えることなどない。

この場合、部下であるジェフに命じるはず。


━賊が逃げ込んだ森。

花に埋もれて倒れていた少女。

もしかしたら、賊の仲間かもしれない。

・・・もし、賊の仕掛けた罠だとしたら・・・・

そんな得体のしれない少女を連れ帰るのは反対だ━


少女を抱えたまま軽々と馬に乗るアランにジェフは勇気を奮い起し声をかけた。


「アラン様。恐れながら・・・その少女を連れ帰るのは同意しかねます」

「何?」


馬上から威厳に満ちたブルーの瞳でアランはジェフを見据える。

ジェフは息を飲んだが、ここで怯むわけにはいかないとばかりに言葉を続ける。


「その得体のしれない少女は、賊が消えた森の中にいました。故に・・・」

「ジェフ・・・お前が心配するようなことはない。行くぞ」



アランは意識のない少女が馬から落ちないよう、逞しい腕で優しく囲むように抱き直し、

未だ蒼白な顔で苦しそうに眉を寄せる少女を気にかけながら、


静かに馬を進めた。