「秋には、音楽会や晩餐会がございますので、
必ず嵩愿さまにお会いできる機会がございましょう」
祐里は、優しく祐雫の黒髪を撫でる。
祐里は、高校生になっても勉学のことばかりで、
殿方に興味を示さない祐雫のことが気になっていた。
優祐と同時に育てる中で、
祐雫に対して気遣いが足りなかったのではないか
と心配していた。
祐雫は、幼少の頃よりしっかり者で、
優祐よりも精神的に成長が早く、
祐里の手を煩わせることが少なかった。
それに甘んじていた自分がいけなかったのではないか
と祐里は憂慮していた。
「さぁ、もうすぐ、昼食でございますので、
その前に優祐さんや里桜さんと
屋外の空気を吸っていらっしゃいませ。
ずっと、お部屋の中ばかりでは、身体に悪うございましょう」
祐里は、祐雫に白い帽子を手渡した。
「はい、母上さま。行って参ります」
祐雫は、元気を取り戻して、部屋を出て行った。