祐里は、慶志朗に思いを巡らせた。
慶志朗は、経財界の主とも謳われる由緒ある嵩愿家の
確固たる地盤を基に世間の威風を集め、
自由奔放に天高く翔ける雰囲気を
持っているように感じられた。
「祐雫さん。
その前にまずは、きちんとお食事を取って、
日々を楽しく過ごさなければなりません。
次回、嵩愿さまにお会いした時に
そのようにお元気のないお顔をされてございましたら、
嵩愿さまは、祐雫さんにお気づきになられませんわ。
美しい祐雫さんをご覧いただきとうございましょう」
祐里は、上昇機運を持つ祐雫らしい初恋を
応援したい気持ちになっていた。
「はい、母上さま」
祐雫は、素直に頷いた。
窓の外からは、優祐が里桜を裏庭へと
遊びに連れ出す楽しげな声が聞こえてきた。