『あのー、なにか御用ですか?』

フロアの入り口に突っ立っていると、知らない好青年に話しかけられた。

『えっとー...六階の水嶋さんですよね?
俺、同じ課の斎藤 翔と言います。』

斎藤という名のこの人はどうも同じ課だったらしい...覚えておこう。

しかも、同じ課ということは椎名係長と面識があるはず。

『あのー...椎名係長の下でA社担当のグループの方いらっしゃいますか?』

『あ、俺です。もしかして資料を持ってたのって水嶋さんですか!?』

『あ...はい。これ、お返しします。
ありがとうございました。』

そう言って資料を斎藤さんに渡した。

『役に立ったなら良かったよ。
全く...椎名さんK社の話にA社の知識は不可欠なのに水嶋さんに渡しちゃうから...いや、水嶋さんが悪いんじゃないんだよ?ただあの人資料がないから大変そうで...』

私のせいでそんなことになってたなんて...申し訳ない。

『あの、椎名係長にこれを渡して貰えますか?』

私は黒いファイルを渡した。

『これを読めばK社の他社との関係は大体頭に入ります。』

これは私の企業ファイルからK社の知識のところだけ引っ張ってきたもの。

さっきのメモからして椎名係長はK社もA社もほとんど知らないみたいだった。

私は色々な会社に対する仕事をしているからデータに書いてあること以外の知識もある。

これくらい、優秀な椎名係長ならすぐに頭に入るだろう。

『了解です!!渡しておきますね。』

斎藤さんは素晴らしい笑顔を私にくれた。