扉を開けると、
「新しく入ってきた子だよね?」
早々に声をかけてきた子は、どうやら明るい子だ。
…というか、女子独特のテンション。
「熊谷南さんよ」
寮母さんは俺を紹介すると、じゃあまたあとで、と言って部屋を出た。
「みなみんっ、よろしくね!あたしは菜々子でーす!!ななって呼ばれてるからそれでいーよ」
さっきの子が話しかけてきた。
"みなみん"…て、あだ名か。
「よろしくね、なな…」
俺はニッコリ笑った。
いきなり名前…いや、あだ名?
女子を下の名前で呼んだのは初めてだ。
「私、松谷弥生です」
おそらく人見知りのこの子は、松谷、といった。
「松谷…」
おっと。つい癖で名字で呼んでしまった。
俺らは女同士なんだから…。
「…さん、よろしくね」
ムリがあるが"さん"を付け足すしかなかった。
――それにしても。
真逆な二人だな、と思った。
明るくて社交的な木下―なな―と、人見知りな松谷。
「弥生は人見知りだから!松谷さんじゃなくて弥生って呼んでいいと思うよ?」