「……あなたがこの家に帰ってくるなんて珍しいわね」
怜香は心の中で舌打ちをした。何故、よりによって今日なのだろうか。
「娘の誕生日を祝いにくるのは当然だろう?…世羅、誕生日おめでとう」
世羅は、黙っていた。自分でも分からない。なにせ、顔なんか覚えていないのだから。
「よく、言うわね。この子の誕生日の日に帰ってきた事なんか今までなかったじゃない!それなのに今さら父親ずらするわけ?」
「仕方がないだろう、仕事だったんだから。それに、お前に話もあったしな」
「……世羅、ケーキ食べましょう?……後で話は聞くわ。今日は世羅の誕生日だから、雰囲気は壊したくないの」
この時、世羅には分からなかった。父親が、何故帰ってきたのか。