父親ーーー。

父の日に小学校でお父さんの絵をかこうと言われたとき、私は一人だけかかなかった。

「あら、世羅ちゃん。どうして、かかないの?」

「…世羅にはお父さんなんていないから」



水無月浩哉。
水無月グループの社長で、世羅の父親である。
端からみれば、母親も社長。父親も社長。羨ましがれる環境。世羅はそれがいやだった。

浩哉は、家に帰ってくることはほとんどなかった。
他に家を持っている…らしい。顔を見たのは片手で数えられるほどだ。
それでも、よかった。
家に帰ってきた時は、必ずといっていい程母親と喧嘩をしていた。
その現場をちょうど目撃したのが小学4年生のとき。
その日は、世羅の誕生日だった。