霎介さんはなかなかどうして今時の人とは少し違うようだった。

今のご時世、わざわざ息抜きや食事に女中とお茶を飲んだりご飯を食べる人など到底いない。

この家には霎介さん以外の住人はいないようだし、使用人も私以外にはいないそうだから咎める人はいなかったけれど。




しかしわざわざ一緒にその場に居るからと言って別段楽しそうにするわけでもない。

だから退屈そうかと聞かれればそうでもない。




あまり表情が変わらないのだ。

根暗そうにしているわけでもないからいまいち考えが読めない。




あまり物事の変化に興味がないようにも思えた。








「お仕事中ごめんなさい。
霎介さん、お買い物に行きますけど何か買って来て欲しい物なんかあります?」


私は襖を開け、そう彼の背に問い掛けた。

彼はただ万年筆を走らせながら、

「うん」

と言っただけだった。





その返事が生返事であることを感じた私は話しかける事を諦め彼が仕事の間に入れる休憩の際に聞く事にしていますぐ買い物に行く事は諦めた。











「んんっ」

正午前、ここ数日決まってこの時間帯に万年筆を置く、そして一つ伸びをする。


「播田君、茶」

「入ってますよぅ」





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