「それと、浅間"様"はやめてくれたまえ」







あろうことか、彼は使用人の私を同じの食卓に着かせ夕飯をとった。
別段普通に食べているような振る舞いなのに物凄い勢いでご飯だけが減っていく。
唖然としている私にこれから私が住む事になる部屋の行き方、だいたいの仕事について話したあとそう切り出したのだ。




「それから敬語も、別段それが口癖と言うのではないだろう?」

「はぁ…まぁ…」

「君が一等話し易い口調にしてくれたまえ。
家主だからと変に気を遣われてはかえって気が滅入る」


歳も近そうだから友人のような感覚で話してくれれば良い、と言うと茶碗に残っていた数口分のご飯を掻っ込んで「おかわり」、と茶碗を差し出した。


「はぁ…ではなんと呼ぶのが良いかしら」


独り言のように呟いてはみたものの当人は素知らぬ顔をしておかわりを待っている。
少し考えた後、湯気があがるご飯をよそった茶碗を渡しながら提案する。


「では…霎介さんと」






彼は茶碗を受け取りながら内情の知れぬ顔でただ頷いた。