お湯が沸騰する直前で火から降ろし、一度湯呑みに入れてから急須に移す。


茶葉が開いたのを確認してから急須から茶葉の入った網を取り出して、湯呑みを一つ、急須と一緒に盆に乗せて書斎に向かった。






「失礼致します。
お待ちどう様でございました」


襖を開けると浅間は伸びをした姿勢のまま畳みに寝そべって目をつむっていた。
寝ているのかしら…?

盆を持って傍に座り初めてまじまじとその顔を見る。
少し長めの黒髪に琥珀に縁取られた眼鏡。
その奥の切れ長の目にすらりと通った鼻、と、それは精悍な面立ちだった。



ぱちり




「お茶でございますよ」


心臓が一瞬動きを止めた気がした。

突然彼が目を開け、真っ向から私を見据えたのだ。

顔にも、声にも出にくい性(タチ)で、本当によかった。








「む?」


盆を見た彼が片眉を上げた。




「お茶、違うございましたか?」

「一つ足りんじゃないか」