しばらく露店の中を歩いていると突然霎介さんが振り向いたので相変わらず顔には出ていないようだったけれど、心臓がビクリと跳ね上がる心地がした。


「君はこの祭に来た目的をわかっているかい?」

わかるはずがない。

「わかってませんよ?」



あっさりと答えた私に彼は得心顔で「なるほど」と頷いた。



「僕達は今夜この祭を楽しみに来たのだよ」

「楽しみに…ですか?」

「僕は日がな引きこもり。君も家事ばかりだろうし、たまには、と思ってね」



だから行きたいところに寄れば良い。と言って霎介さんは微笑んだ。












沸々と、
私の中で何か込み上げてくる。
衝動的に、爆発的にそれは膨れ上がり、今の私は自身を抱きしめないことには何をしでかすかわからなかった。



それほどまでに嬉しかった。

"恋"とは、こんなにも強力なのかと、緩む頭の片隅でぼやく声がする。







「…良いんですか?」



自身の中で込み上げる"それ"が暴走しないようにと身を固くすると、可愛いげのない小さな声が出た。



「勿論、大いに愉しんでくれたまえ」





霎介さんの声は優しく笑った。