「……ふー…」

「一区切りつきましたか?
お昼の用意、できてますよ」





お昼にします?と続けて問うと霎介さんは「む。」と言いながら卓上に万年筆を置いて体の向きをこちらに変えた。


「素麺か」

「えぇ、今日は少し蒸し暑いですから。さっぱりしたものが良いんじゃないかと思って」


切り子の細工がされたガラスの椀に麺つゆをいれ箸と一緒に渡す。
薬味を渡すと興味深そうにそれらを見た。


「薬味にミョウガやカラシも入れるのかい?」

「えぇ、炒めた茄子を一緒に入れても美味しいんですよ」

「ほう……む、美味いな」

「そうでしょう?」




得意げにそう言って笑うと、霎介さんはたまにしてある素麺をひとたま器にいれ、つゆの中でほぐしていく。




「播田君、君は植物には詳しいのかな?」

「そうですねぇ、どうなのかしら…
一応山育ちですから食べられる食べられないの違いくらいはわかるのではないかしら」




そう言うと霎介さんは「ふむ」と何故か満足そうにひとつ頷いた。






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