どんな目をしていたのだろう?

霎介さんはそう言ったっきり、机に向かってしまった。
私も仕方なしに本の修復を始める。






本の修復を終えたあと、私は庭に出た。
使用人は私一人なうえ、霎介さんは庭師を雇う気もさらさらないようだから広い庭の松の木は自由に手足を伸ばし、足元は雑草だらけだ。



「…ふう」



着物の袖を紐でまとめ直し、足元のホトケノザやペンペン草を手早く採っていく。

それにしても、今日は日が強い。
着物の下にじっとりと汗をかくまでに、そう時間はかからなかった。

すぐにそこら辺には採った雑草の小山が点在し始め、だいぶこざっぱりとしてきた庭を眺める。


「…今日はここまでかしら」


そろそろお昼ご飯の支度をせねばならない。
私は小山をまとめて片付けると家の中に入った。


玄関に入ると、通りすがりの風がひんやりと汗ばんだ頬を撫でていく。

額に張り付いた前髪をどけて、濡らした手ぬぐいで汗を拭うと、幾分すっきりした。




.